2021年に書いたもの総括

2021年に書いたものの裏話とか裏設定とか総括あれそれのつもりだったのですが、思いのほか解釈&メイキングに近い感じになりました。
ブログ記事みたいなもんだと思ってください。
※一切の本誌関連ネタバレへの配慮をしていません。

●12/14『心のいちばん柔らかなところの話』
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16599250
・この前プレゼンし損ねた『自死してください悟様』概念(最悪)を、その他書きたかったことと併せてようやく消化できたのでよかったなあという感じです。
・概念プレゼンだけなら漫画1枚でいけるじゃん!と思ってちょっとだけ試行錯誤したときがあった(楠本まきがすごく好きで、あんな感じで文字半分絵半分の作品が作れたらなみたいな憧れがあって)のですが、絵心ゼロなので三万字ちょいの小説を打つほうが断然早かったですね。
・以下、投稿完了したら呟こうと思って書き留めていた執筆時のぼやきです。

 五誕って書いておけば何でも読んでもらえると思うなよ
 本誌が暗いので私も暗いやつ書きました←なんで?
 おまけみたいな性描写のせいでR-18タグつけることになった
 短編と言ったがあれは嘘
 頭が良いのでいつ完成しても大丈夫なように五誕からクリスマスにかけての話にしたけど頭が悪いのでこんな時期に仕上げてる

・これに限らず、自分の作品は自分が一番愛しているものの、それはそうとして基本的に長めのやつを書くときはホント最悪誰だこんな長いプロット考えたの許せねえって死ぬほど悪態つきながら書いてます。出来上がったあとや中身を忘れた頃に読み返すのが楽しいのと、ああこの人には刺さったんだろうなあという呻き声のような感想をいただけるときが一番嬉しいので、長くて重ための話を仕上げるときはそのふたつを心の支えにしています。
・六眼の話や御前試合の解釈等いろいろと書きたかった要素を詰め込むと話として上手くまとまらなくて、テーマが決まるまでにたぶん5回くらい構想ごと総書き直しをしているので、削ぎ落としたものも多いですが、ようやくどうにか形になってよかったです。いちばん古いネタのプロトタイプは遡れる限りだと2020年11月上旬とかなので、筆遅溜め込みマンの中でも屈指の筆遅でした。
・Fate/stay nightのイリヤ√(実在しない)のオマージュが各所に散りばめられているんですが、そんなこと言われても作品を知っていようが知っていなかろうが「何……」って感じだと思うので気にしないでください。自分が五条悟のことをイリヤスフィールだと思っている精神異常者だということがわかって良かったです。あとで御前試合の話のところでも書くつもりですが、あのときの慶長五条家当主のふわふわ自由奔放そうな言動モチーフも実はイリヤです。私が大好きなのもありますが、人懐っこい猫のような無邪気さ裏に潜む残酷さのバランスがとても似ているなと勝手に思っています。
・恵に呪術師を辞める選択肢なんてないのに、それをわかっていて提示して、わざわざ「辞めません」と言わせて喜ぶ五がめちゃくちゃ性癖なので何回でも恵に呪術師やめる?って聞かせたいですね。わかっていて聞いているくせに、どこかでは「辞める」と言われたら本当に辞めさせてやるつもりで、でも恵は辞められないことを知っているから「辞めません」としか言わないところまでで1セットです。テストに出ます。
・序盤のトルストイのくだりは大学の講義の与太話で聞いたものなので、まあいいかと思って裏はとってないです。たぶん本当の話なんだと思います。後述の既婚者不倫五の話でも投稿時に『アンナ・カレーニナ』の原文冒頭を引用するくらいにはめちゃくちゃ好きなんですが、未だに本編を読んだことがないという致命的なバグを抱えています。
・特に序盤とか気持ちいいくらいの手癖文体なので、ザクザク書いていく感じが大変楽しかったです。書き手が根暗だから登場人物みんな根暗になるのがネックですね。このあいだ陽キャな人が陽キャな話を書いているのを見かけてなおさらそう思いました。
・中身に影響があったかはわかりませんが最近はグレンラガンを観ながらBLEACHとかゴーゴリの短編集とかを読んでいました。
・トロッコ問題の概要等は我らが叡智Wikipediaを参考にしました。五と伏がそれぞれの出した問題について(特に伏が出したほう)は、ちゃんと論理や問題の趣旨的に矛盾がないかというのと、話の流れ的なところで違和感がないかを無い知恵絞って考えたので、こういう難しいやつをねじ込むのは絶対もう二度とやらんと思いました。背伸びしたっていいことないですからね。そもそもあそこでトロッコ問題をやるつもりは全くなかったのですが、流れで試しに入れたら思いのほかえぐめの仕上がりになったのでそのまま残しました。
・婆やの話は大変ありがたいことに半年ほど前にマロリクをいただいていたので、ようやく登場させられて本当によかったです。登場させようと思ったこと自体わりと書き始めてそこそこ経ったあとだったのですが、初期構想としては百鬼夜行が始まってから、恵が五条屋敷で婆やから夏が五の親友だったことを聞かされて知るというものになっていました。ただそうするとその後の流れが悪くなってしまったのと、そもそも婆やは原作のネームドキャラではないので、出しゃばりすぎないように、誰かに気づきを与えるほど大きな存在にはならないようにと今の形になりました。
・五が作中で語る親友の話を絶対に「親友だった(過去形)」にしないために実は言い回し等めちゃくちゃ苦心しました。ささやかなこだわりでした。
・百鬼夜行までの五と伏のやりとりはあまりにも考えるのが楽しくてすでに短編やら何やらで何パターンか書いているのですが、前に書いたのと被らないようにしようと思うとそろそろ次あたりでネタ切れ感が出てくるなと思いました。いや次の構想なんてないですけど。
・あとそういえば最近『月の欠片』やその他短編で伏をたくさん泣かせていたので、今回は五も伏も絶対に泣かせないという縛りでやっていました。泣かせずに済んだのでよかったです。
・当初はR-18にするつもりは全くなかったのですが、7割方くらい書き上がったあたりで息抜きとしておまけで書いていたらそれっぽくなったので、そのまま追加されました。終わり方も初めは「わかりましたいつか俺がアンタを殺してあげます」みたいな感じだったのですが、ここまで来てそんなつまらない〆め方があるかいと思って今の形になりました。百点満点ではないものの初期プロットよりはまあだいぶマシになったでしょうと思っています。
・『自死してください悟様』概念は、もともと少し前の本誌の天元様回で、一度天元と星漿体との同化の邪魔を六眼に阻止された羂索が、その後生まれてきた六眼をみんな生後数ヶ月以内に殺した、みたいなところから派生させています。立て続けに六眼を殺された五条家としては何か対策を取っただろうし、そのうち六眼が殺されなくなったら今度は封印や無力化等の可能性を考慮してその対策を取っていたのではみたいな感じです。個人的には万が一のときのために遠隔操作可能な自爆装置的術式のようなものを埋め込むとかそんなのまで考えていたのですが、込み入った話になりそうだったのでだいぶ初期の段階で没案になりました。少し前に呟いた「獄門疆内の五も今頃五条家一同から自死を願われているかもしれない」みたいなのもこの最悪概念の一貫でした。推定千年後の解放を待つよりも、最低でも四百年に一度くらいの頻度では排出されていそうなSSR無下限+六眼ガチャのリセマラをしたほうがいいって結論に、呪術師の家系ならなりそうですよね。
・天元様の口ぶり的に六眼自体はそこそこのペースで生まれていそうだったので、「五条家は六眼の生得術式が無下限呪術じゃないことが判明したら、その段階で子供のうちに殺してリセマラしていた」みたいな要素を初期構想だと話の中に入れようとしていたのですが、そこまでして無意味にキッツい話にしたいわけではなかったのでやめました。それに五自身も呪術師の家で生まれ育ってきたので、クソみたいな家だとは思いつつもそのリセマラ行為自体に疑問を持つとも思えなかったので。
・これは解釈の話ですが、原作内での五条家の立ち位置があまりにも六眼持ちの無下限呪術使いに依存しすぎるので、筆頭戦力としての五条家当主とは別に元老的なポジションがいて、代々当主がすげ変わっても意思決定自体は上手く回るような組織構成になっているのではとちょっと思っていました。今回はあまり触れずに終わってしまったけれどやっぱりドロッドロの呪術の大家としての五条家の話を書きたいなと思ったので、いつかどこかで何かになるかもしれません。CP話には向かなさそうなので、こういうのを漫画で描けるようになりたいですね。
・ちなみに『自死してください悟様』概念を聞いて恵がちゃんと怒ることができたのは、彼が禪院家でも五条家でもなく伏黒恵としてここまで育ったことの証左のようなものだと思っているので、あれを聞いたときの五はとても嬉しかっただろうなと思っています。育成大成功みたいなもんです。
・最後の最後でどうしても繋がりの悪いところを埋めたり推敲したりタイトルを捻り出すときが一番しんどいみたいなところがあるんですが、何を書いていても完成直前(今回は27,000−29,000字あたり)から急に進まなくなるんですよね。最後のほうはいつも通り早く手放したい一心で書いていました。回らない頭でどうにか絞り出したタイトル候補が他にいくつかあったのですが、『月の裏側』とかにしちゃうとまた月かよとなるので止めました。月姫に影響受けすぎ。

●11/15『思い出話』
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16424442
・私が自分だけで書こうとしていたら絶対に木べらの話も生姜湯の話も出せなかったし、むしろ元ネタである黒糖さんのツイートを拝見した瞬間に脳内に溢れかえった存在しない記憶をそのまま文章にしたためただけなので、いい話だったと言ってもらえるたびにありがとうございます私の最推し黒糖さんをよろしくお願いしますと思っていました。
・黒糖さんの元ツイだと『しろくまちゃんのほっとけーき』を津美紀に読み聞かせてもらう恵、だったのですが、どうしてもうまくまとまらなかったので五に読み聞かせてもらいました。小児科の待合室で絵本を手に取った五に恵が赤面したのは単に読み聞かせをされるのが恥ずかしかったのに加えて、昔どこかで姉に読んでもらったことがあって、その内容の対象年齢と今の自分の年があまりにもかけ離れていることを知っていたから、という感じの設定だったということでひとつよろしくお願いします。
・『しろくまちゃんのほっとけーき』はさすがにもう手元になかったので、Youtubeの読み聞かせ動画を参照しました。余談ですが、終盤で雑炊を作って食べる五津恵の会話は実は『しろくまちゃんのほっとけーき』で引用したセリフと全く同じものになっています。
・これもプロトタイプの大枠は3月くらいには出来上がっていたのですが、あれこれしているうちに11月になっちゃいました。初期プロットでは序盤で高専から埼玉までのあいだにタクシー運転手のおっちゃんから子供の看病の仕方の手解きを受ける五がいたのですが、五にそんな楽をさせてやるのは癪だなと思って没にしました。
・恵ちゃんと呼ばれて「恵くんです」と返すちびめぐ個人的に結構気に入っているのですが、女の子みたいな名前の子ってわりとそのあたり気にして訂正しますよねみたいなneica版存記です。
・作中のオノマトペを選ぶときにかなり遊んだので楽しかったです。

●10/3『月の欠片』
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16150167
※TYPE-MOON「月姫 -A piece of blue glass moon-」のネタバレを含みます。
・なんでここでこんな注意書きをしているかというと、型月のオタクはまだ型月にハマっていない人のことをまだ型月にハマっていないけれどいずれハマる人としか認識していないからです。ハマる際には良ければぜひご一報ください。『葉桜ロマンティック』というBLゲーもあるよ!(ないよ!)(本当にないです。)
・タイトルは上記の通りクリアしたばかりの月姫リメイクから拝借したので全人類月姫リメイクをプレイしてください。サントラも買ってください。格ゲーもあります。
 http://typemoon.com/products/tsukihime/
・と言いつつ別に設定とかをパロったわけではないです。月姫は吸血鬼を殺したり吸血鬼に殺されたり、かわいい先輩や妹や双子メイドさんといちゃいちゃしたりする話です。嘘は言っていません。リメイク版制作発表から10年以上掛かって今年の8/24にようやく発売されました。ありがとうございます。
・アルクェイド√の一番の山場でReoNaによる主題歌『生命線』のピアノアレンジである『ハッピーエンド』が掛かるシーンは、この話を書くにあたってラストのところでちょっと意識していました。結局そんなに明るくない話になっちゃいましたが、絶対に最後は満月の下で二人っきりで好きって言わせようと思っていました。
・せっかくなので当該楽曲も置いておきますね。これの8:52からです。コメント欄のDisc 4 楽曲02を押しても飛べます。抑えめなので音量でっかくして聴いてください。ありがとうございます。

・実はもともとはワンドロ用にストックしていた野薔薇視点の3,000字程度の短編でした。いろいろな視点から五と伏の関係を掘り下げたらおもしろいかなと思って人をたくさん追加していったのですが、あまりに長くなりすぎたのでもう二度とやりません。伏視点は最終章だけと思っていたのですが、そうするとあまりにまとまりが悪くなるので仕方なく中盤にもひとつ挟みました。
・虎杖が頑張って宿題を片付けているときに「もう模範解答写せば」って唆すワル黒恵くんと、それを「いや、せっかくここまで来たから、明日起きてから頑張るよ」と断る虎杖善良悠仁のやりとりのところ、実は結構気に入っています。二人とも善悪の属性的にそういうところがあるだろうなと思うので。一年ズ三人でのやりとりも比較的活き活き書けたかなと思っているのでお気に入りです。
・恵の大怪我はなんちゃら学会だか何かの交通事故の症例か多臓器不全か何かのホームページを参考にしました。ちゃんとメモしておけば良かったです。高速道路の景色は以前呟いた通りYoutubeの運転席目線動画を参照しています。その他集中治療室の風景もGoogle画像検索からです。あと何かあったかな。高速道路は普段乗らないのでどこがどうなっているかよくわからず、関東の高速道路解説動画をひとつと、Google Mapで適当な都内から奥多摩くらいまでの運転ルートを検索して参考にしました。
・野薔薇をCPに都合良く理解のある汎用女キャラで終わらせたくなかったのと、硝子さんをCPに気づきを与える賢者ポジにしたくないという縛りを課したら全然話が進まなくなったのでもう二度としねえ…って思いました。長編なんて二度と書かねえって書き上げるたびに言っているのでここまで来るとただのツンデレか中毒者です。毎回長いし暗いしでキレながら書いているので、今後長いやつを書いていたらああまたこの人キレながら頑張ったんだなと思って笑ってください。読むほうも大変だろうし3,000-15,000字くらいが理想かなとは思っています。毎回。
・上記で書いた通り気づきを与えるキャラがいないので、五も伏も初めからわりと考えは定まっていて、周りに何を言われても変わらず、結局二人きりで顔と顔を突き合わせてようやく関係が進展するみたいな話になっています。意図的にそうしたというよりは書いていたら勝手にそうなったので、まあ二人ともそういうところあるよなという感じです。
・じゃあ冒頭省略して初めから伏視点だけでスッキリ短くまとめても良かったのでは?と思わなくもないというか今でも思っていますが、奈須きのこといううちの宗教の唯一神がシナリオを書いた月姫リメイクやFGO第2部6章でめちゃくちゃ日常描写とかを丁寧にやっていて、やっぱり話に深みを持たせるためにはこういうのこそ大事なんだなと思ったのでこうなりました。
・最後のほうは書いてて疲れてきて七海パートとかもう絶対いらんやろと思って飛ばそうかと思ったのですが、さすがに話が繋がらなくなるのと、飛んだ分を突っ込めそうな硝子さんパートがすでに長かったのとで結局削れませんでした。プロット時点でこのままいけば完成は60,000字ちょっとくらいかなと思っていたので、七海パートと最後の伏黒パートをもう少し掘り下げていたらぴったり賞だったなという感じです。
・今回は途中からタイトルありきで書いてしまったところがあるので、硝子さんの過去回想あたりちょっと内容的に浮くかなと思っていたのですが過ぎたことをあれこれ言っても仕方ないですね。
・前にも呟いたような気がしますが、硝子さんの口調が本当に難しくて、どの時空で喋らせるときもあの五と夏に挟まれてタバコを咥えてニカッと笑ってピースをする高専生のときのイメージで喋らせないと、汎用サバサバつよつよお姉さんになってしまって、あのどこまでいっても結局は女の子な硝子さんの雰囲気から遠くなるなと思っています。今の高専生たちと喋るときはそんな感じもあるかもですが、五との会話はいつまでもあのときのままなんだなと思っているので、今回も徹頭徹尾高専生のときのミディアム茶髪の女の子のイメージで喋らせました。
・最後のほうのところの五のセリフで「好きだよ、恵。僕の好きは、そういう好き」というのがあるんですが、強いこだわりを持ってあえて改行しなかったところなのでここで主張しておきますね。改行せずに勢いに任せて続けさせたほうが、セリフに人間味が出ると思ったんです。

●5/24『高専初日のめぐの話』
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=15290742
・やっぱりこれくらいの長さが一番だよって思いません???
・それぞれの墓の配置にめちゃくちゃ悩んで試行錯誤した跡が今でもメモ帳に残っています。たぶんそこに一番時間が掛かりました。区画を見て回る五と伏の動線をいかに不自然な感じにせずに話を持っていくか的なあれです。
・五の「こうして入学初日に二人で一緒に場所を決めたな、とか。あのときはこんなにも温かったのにな、とか。そういうのを思い出しながらいつか、ここに独りで戻ってくるの、絶対に嫌だからね」のセリフを一番の山場にしたつもりだったので、そこでグッときてもらえたら書き手としてはガッツポーズです。
・書いていたときにイメージしたのは日本の地方都市の広い墓地園だったのですが、このあいだアーリントンの風景を動画で見たときにすごく厳かな雰囲気が漂っていたので、安らかではなくもっとああいう空気感を出したほうが良かったかなと思いました。厳かな雰囲気というか、そこに納骨される呪術師が殉職者に該当するという発想自体が執筆中は抜け落ちていたので、ちょっと悔しかったなというぼやきです。安らかに眠る、じゃなくて安らかに眠れ、みたいな。いや悔しい。

●5/9『五条悟が伏黒恵のおうちの人をしてる話』
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=15197179
・親的な人って三者面談のときだけ外ヅラいいし優しいよねみたいなところから生まれた話です。ワンドロ投稿したときも支部に上げたときもいつも通りテンション低めな話のわりに当社比思いのほかウケたので、旬ジャンル怖いなって思ってました。
・私が岩手県を愛しすぎているので五からの返信の消印は岩手県になりました。五にはいつか遠野で河童と戦わせたいなと思っています。
・それぞれの手紙の中で使われている漢字/使われていない漢字が何年生で習うものなのかはあえて調べていませんでした。恵はたくさん本を読むのできっと難しい漢字も使えるところを教員に忖度してめんどくせと思いながらひらがなにしているだろうし、五もまあこれくらい読めるやろみたいな雑さで書いていると思ったので。(手紙自体はちゃんと丁寧に書いています。)
・序盤の夜蛾学長のお手製呪骸をPTAバザーで売り飛ばそうとする五は笑いポイントです。射的のくだりはテキ屋の兄ちゃんをやっている五が見たいなと思って書きました。治安悪そう。

●5/9『既婚者五と不倫めぐの話』
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=15197087
・当て馬モブ女じゃなくて本当にこれ以上ないくらい良い人と結婚した五と泥沼不倫する恵の話が書きたかったやつです。
・ファンブック発売前に、掲載予定の登場人物既婚者情報に関して全世界が盛り上がっていたのが楽しかったので、五が既婚者だったらおもしろいなと思っていました。死人が出ていたかもなので今思えば違って良かったなという感じです。
・この話に限らず、受けでも攻めでも普通にまともに異性とも付き合ったことがあるみたいなのが一番性癖に響くのでアレですが、たまにああ同じ性癖持ちだろうなという人の作品を見かけるとめちゃくちゃ嬉しくなります。そこからしか摂れない栄養素があるんですよ。
・特に突っ込みも入らなかったので触れることもなくそのままにしていたのですが、ワンドロ投稿ツイートしたときの「Каждая несчастливая семья несчастлива по-своему」は『アンナ・カレーニナ』の冒頭からの引用です。「(幸せな家族の幸福は似通っているが、)不幸な家族にはそれぞれの形の不幸がある」みたいなあれだったと思います。後半のсемьяは単数形なのに対して前半の家族は複数形みたいな解説でよく出てくるあれです。これだけよく引っ張ってきておいてまだ中身を読んだことないの本当に良くないと思うのでそろそろちゃんと読みます。
・言い忘れたんですが、『心のいちばん柔らかなところの話』の冒頭でフシメグが『アンナ・カレーニナ』を読んだことがないと言っているのは私が読んだことないからそう言わせたのではなく、あの人は公式設定としてフィクションを読まないだか好まないだかのはずだったので、作中でもそういう設定にしました。

●1/15『五条悟と伏黒恵と慶長年間の御前試合の話』
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=14468796
・御前試合の回想部分の設定として、五条家当主が反転術式を使えることにするかどうかで最後の一秒まで悩みました。魔虚羅に対する勝利条件さえ知っていれば蒼だけでも勝てたような気がする(無下限呪術+六眼持ちの五条家当主ならどんな不利な条件下でも負けるとは思えない)のと、じゃあどうやって二人は原作の五が語ったように共倒れすることになったのだろうという疑問に折り合いをつけて話を持っていくのがかなり大変だったのですが、結果として一番私が納得できる形にすることができて良かったなと思っています。最後は五条家当主が温存していた茈で魔虚羅を撃退したものの、五条家当主も禪院家当主ももう反転術式ではどうにもならないくらい負傷して無念にも命を落としたという設定でした。
・原作考察の落とし所としては、この件についてあまりにも漁夫の利がありすぎる加茂家(というかノリトシ)が一枚噛んでいたかなと思っています。天元様と星漿体の同化阻止のために禪院家当主を操って六眼持ちを殺させたとかまあまああり得そうですよね。まあまああり得そう展開をあの芥見下々がやるとは微塵も思ってはいませんが。
・御前試合回想のところは現代的な概念や単語をいっさい出さないように実はめちゃくちゃ気をつけました。江戸時代付近だったら話し言葉は現代とほぼ変わらないはずなのと、まああんまり素人が下手なことをしても読みづらいよなと思ったので、特段口調を古めかしい感じに変えたりはしませんでした。五条家当主の外見は渋谷編敵回想のショタ五のイメージで、高専五のように一人称は「俺」にして、先述の通りイリヤスフィールのような猫っぽく無邪気で残虐な雪の精イメージで喋らせました。
・禪院家当主はありがちな消極的語り手に見えて実はちゃんと余裕のある戦い方ができていれば領域展開を日に三回くらいまでならぶっ放せるような化け物ですみたいなことを作中の展開でチラッと入れたような気がします。消極的な凡人に見えるのは本人の自己肯定感が低いだけです。五条家当主が「俺」だったのでこっちは「僕」にしました。(慣れない入れ替えだったので何度も間違えて逆で書いては消してを繰り返していました。)外見イメージが湧かなかったので禪院家当主のほうを語り手にしてしまったのですが、黒髪黒縁眼鏡主人公っぽい暗さになっちゃいました。所詮はネームレスと思って人格は掘り下げず、ありがちな明治時代の書生さんみたいな大人しげなイメージで書いていたらこんなふうに仕上がりました。現代軸と対になるようにしようと思ったのと、このときちょうど人様の年齢逆転後輩先輩パロにグッときていたので、禪院家当主くんは五条家当主よりも年上になりました。
・余談ですがオリキャラ的なものに名前を付けてしまうと人格を持ちすぎてしまって私は好きではないので、今回も五条家当主と禪院家当主の下の名前を考えなくていいように(=詳細のキャラ設定を考えなくていいように)ぬるっと誤魔化しました。
・五条家当主の「じゃあ死ぬなよ禪院。その子供のために闘えないというのなら、俺のために生きて、闘って」と最後のほうでの恵のセリフ「生きていてください、五条さん」は、私の大好きな外国文学翻訳家の人が私の推しについて書いたエッセイで引用した訳文「お互に、勇士の生命は輝かしい、生きてゐよ、死ぬのはつまらないことだ」から拝借しています。当初はほぼそのまま使おうとしていたのですが、あまりにもクサくなったのでやめました。実はこの話がしたくてこの総括を書こうと思い立ったという経緯があります。いやあ長かった。ここまでお読みくださりありがとうございます。いやもうすでにドロップアウトしているかもわからんけれども。まだあと少し続きます。
・上述の「生きていてください、五条さん」という恵のセリフがなければこの五は屋敷には帰ってこなかったかもなって気持ちで書いてました。確率としては五分五分くらいです。書いていたときの想定としては、見送られたのが「頑張ってください」でも「いってらっしゃい」でもなく、このセリフだったからこそ帰ってきたみたいな感じです。
・今読み返すとこのときは五と伏にはそれぞれ別の特別がいる、という思想が強く出ていて、あれからいろいろと書いてきて結局五と伏にはお互いしかいないと思うようになった今ではもう書けない距離感だなあと久しぶりに読み返してしみじみ思いました。
・五条家当主の「血統や伝統なんて価値のないことにこだわって、本当に大事なものは誰も見えていないんだ。俺がこの世を、禪院が心の底から笑える場所にしてあげる」というセリフの後半部分は、0巻夏油の「ただこの世界では私は心の底から笑えなかった」から引いています。呪術廻戦は廻ってこそだと思ったので。前半部分については、今思えば『星の王子様』の狐か何かのアレっぽいですね。世間的にファッション扱いされすぎていて逆張りオタクとしてはそこまで好きな作品ではないので、意図して引用したみたいなのではないです。
・余談なんですが、0巻夏油の最後の「でも別に高専の連中まで憎かったわけじゃない。ただこの世界では私は心の底から笑えなかった」のセリフ、頑なに非過去形で「(夏油傑は)親友だ」を使い続ける五に対して発せられる、考え得る限り一番残酷なセリフだったなと思っています。あれだけ眩しいくらいの三年間の思い出を今も大事に抱え続けている五に対して、最後にそれを全否定して去っていく夏のセリフがあまりにもえげつなくて苦しいなと思いました。その後に夏が発したのが「最期くらい呪いの言葉を吐けよ」なのでわざと憎まれて去っていこうとしたんだろうなみたいな妄想を含めてしんどいですね。これだけで短編一本書けそうというかすでに誰かしら書いていそうだなと思いました。おすすめあったらぜひ教えてください。
・御前試合の回想の最後で「禪院、ごめん。ごめんね。次の世でも、きっと俺の隣で笑っていてね」と書いたのですが、別に作中では両家当主を原作軸五と伏の前世扱いにしているわけではなく、二人とも慶長の二人とは別人ではあるけれど、それはそうとして現代軸の最後のところで今は隣で笑っているみたいなラストにしました。HAPPY END。曖昧に濁してありますが、御前試合の記憶は熱に魘されているあいだに恵が見た夢という扱いでした。起きたら覚えていないやつです。
・構想段階では御前試合の回想とその前後の五と伏のやりとりだけのはずだったんですが、それだとストーリーとしてあまりに弱いので、御前試合回想を書き終わったあたりで急遽百鬼夜行の話を捻じ込みました。あれこれ試行錯誤の突貫工事もあったのですが、結果的に綺麗にまとまったので良かったかなと思っています。

●その他ワンドロ作品
7/11『恵と五条と一人称の話』
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=15593635
『五伏ワンライlog (2021)』
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=14576118
1/10『女の子になった恵の話』
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=14437843
2020/12/27『五条悟の隣がほしい伏黒恵の話』
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=14341518
・特段メモに残しておきたい裏話はないかなと思っています。何かあればしれっと追加します。ひとつだけ2020年末の短編がありますが、これはワンドロ初参加のやつですね。五伏ワンドロに参加したくて今のアカウントを作ったので懐かしいです。二次創作から足洗うつもりで一年くらい距離を置いていたものの、あっというまに舞い戻ってきてしまったので笑っています。
・ワンドロ(語感がいいのでだいたいいつもワンドロって呼んでいます)はお題を見て思いついたのをさらっと書いているときもあれば、いつか時間があったら書こうと思ってストックしているセリフや構想メモや没にした長編プロットの断片からいい感じのを探してきて使い回すときがあります。割合としては半々から4:6くらいです。

●おわりに
実は向こう側に自分じゃない人格がいるような状況下で文章を書くのだいぶ苦手なのですが、自分のためだけの文章をひとりでじっと打ち込むのはめちゃくちゃ好きなので、この総括もつい長くなりました。いつもこの調子で中編長編の字数も増えています。コミュニケーション能力がないと言われればそれまでなんですが…。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。私が好き勝手喋っていただけなので、もはや最後までお付き合いいただいていなくても、このページを開いていただけただけで感謝って感じですね。そんなことを末尾に書いても伝わらんとは思いますが。
書きたいネタが続く限り、来年もまた好き勝手にちまちまやっていけたらなと思っています。
よいお年をお迎えください。